My important place【D.Gray-man】
第42章 因果律
「馬鹿! 無理だ、結界を解かねぇと声なんて届かねぇよ!」
「ッ…そんな…」
慌てるバズ達を制すジジの声。
雪もまた目の前のドアを押しながら、不安げな声を漏らした。
この中にアレン達はいる。
恐らく、AKUMAかノアと共に。
そもそも孤児院の者はどうなったのか。
その者達も巻き込まれてしまったのか、はたまたその者達がAKUMAだったのか。
もしかして怪盗Gの正体はイノセンスではなくAKUMA?
そんな嫌な予感ばかりが募っていく。
どうにかこの結果を解かなければ。
でもどうやって?
(ユウ…アレン…皆大丈夫なの…っ?)
ぎゅっと握った拳をドアの側面に押し当てる。
不安な表情で孤児院を見上げようとした、雪の目にそれは唐突に飛び込んできた。
「…え?」
拳を押し当てていたドアの側面が、まるで水面のように波紋を広げる。
それは先程銃弾を浴びせた時と同じ反応だった。
しかし何故今それが起こったのか。
「何──」
理由が読めず不思議そうに声を漏らした時。拳を当てて体重をかけていた、そのドアの存在が"消えた"。
「わ…!?」
否、姿は消えてはいない。
確かに目の前にあるドア。
しかしその"触感"が消えたのだ。
体重を支えてた存在が消えて、そのままバランスを崩した雪は前のめりに傾く。
頭からドアにぶつかるかと咄嗟に強く目を瞑った。
が。
「は?」
「え?」
「…先輩?」
体はドアに衝突することなく。銃弾のように弾き返されず、寧ろ受け入れられるように波紋の中へと入り込んだ。
まるで水面に沈みゆくように。
一体何が起きたのか。
ドアを貫通するように向こう側に消えてしまった雪の姿に、ジジ達は唖然と固まった。
一瞬の沈黙後。
「「「ええぇええええ!?!!!」」」
その叫びは、深々と粉雪舞う白い空に響き渡った。