My important place【D.Gray-man】
第42章 因果律
「…正面突破…か」
ドタバタとボネールを押さえるファインダーズを余所に、ふと何か閃いたジジが呟き様にナイフを一本取り出す。
それを孤児院のドアに向けるものだから、雪は慌ててジジへも飛び付いた。
「ジジさん!? 何し…っ……何してるんですか」
てっきりナイフで鍵穴でもこじ開けるかと思いきや、そうではなく。ガリガリとナイフの刃をドアの側面に沿って当て、削るような仕草。
一体彼は何をしているのか。
「…この建物、可笑しいぜ」
「え?」
「見ろよ。どこ削っても全く傷が付かねぇんだよ」
ジジの言葉に慌ててその手元を覗き込む。
よくよく見れば、確かに。
ガリガリと削る音は鳴らしているものの、ナイフは全くそのドアを傷付けてはいなかった。
「…なんで…」
「雪。銃貸せ」
「え? あ、はい」
差し出されたジジの手に、言われるがまま腰のホルダーにしまっていた銃を取り出して手渡す。
女性でも扱える極普通の拳銃だが、常に弾は装備されている、人を殺傷するには充分なもの。
「アジア支部にもこれと似たようなもんがある。ありゃ支部長のじいさんが造った扉だが…」
「バク支部長の?」
カチン、と安全装置を外したジジの手元の銃が狙ったのは、目の前のドア。
そして躊躇することなく引き金を引いた。
ドン!と耳鳴りを残しそうな音を立てて撃ち抜かれるドア。
「わっ!?」
「うおっ!?」
「何してんのジジちゃんッ!?」
その音に押さえ付け押さえられしていたバズ達も、何事かと動きを止める。
ボネールの言葉に感化されて正面突破を試みたのか。
「ジジさん! 何して…ッ」
「これ見ろよ!」
「えっ」
促されたのは銃弾を放った先。
「き…傷が…っ」
「付いてねぇ…!?」
「銃弾っ弾かれちゃってますよ…!」
そこには水面のように波紋が広がっている、ドアの側面があった。
足元にカンッと転がったのは、撃ち破れぬものに衝突したかのように、ひしゃげて潰れた銃弾。
見覚えのあるそのドアの反応に、ジジは頭を抱えた。
「こりゃ封印の結界だ…!」