My important place【D.Gray-man】
第42章 因果律
「その型に愛着があるとか?」
「んー…というか、これが特別製なんだよね」
「えっ初耳です!」
「そいつは雪が何度も補修と改造を重ねたんで、難癖あるが耐久性はオレらの装置ん中で随一になったんだよ」
「難癖って言い方。馬鹿にしてない?」
「本当のことだろーよ。借りた時すげぇ扱い辛かったんだぜ」
嫌な思い出でも脳裏で蘇っているのか、顔を顰めて話しに割り込んできたのはバズ。
「もううちじゃあ、その型扱ってんのは雪くらいだな」
「へぇ~…古き物を大切にする…格好良いですね先輩!」
「あはは、ありがとう」
純粋に尊敬して言ってくれているのだろう。両拳を握ってキラキラと輝く目を向けてくるゴズに、雪は軽く笑って返した。
少しばかり苦笑混じりの。
(そういうつもりでもないんだけどね…)
古き物を大切にする、という思考は良いことだと思う。
しかしそれで命を落としていては意味がない。
何より優先すべきは己の命だ。
そこに重点を置くなら、扱い易い最新型の結界装置を迷わず選ぶだろう。
しかし敢えてこの旧型を使っているのは、最新型のものより耐久性が勝るから。
結界を発動するのに多少手間はかかるが、慣れてしまえはどうということはない。
ゲームのスキルで言うなら【素早さ】より【守備】に重点を置いた装備。
理由は一つ。
(ユウとの任務じゃ、ほとんどAKUMA討伐だったもんね)
神田と組まされる任務は、何かと命の危険性が高いものが多かった。
素早さに定評のある神田だからこそ、そこは彼に任せて自分は守りに徹する。
それ故の装備だ。
「おい、あんまり雑談し合ってんなよ。後ろで怖~い顔が見てんぞ」
そこに呆れた声でぼそぼそと耳打ちしてきたのはジジ。
後ろ、と言われ恐る恐る振り返ったファインダーズが見たもの。
「…うわ」
「わぁー…すっごい見てますね…」
「見てるってより睨んでんじゃねぇのか、あれ…」
くっきりと眉間に皺寄せた顔に、への字に曲げた口には噛み切れんばかりの短い煙草。
寝不足で充血させた目を射殺さんばかりに向けてくるのは、パリ中央警察署の警部。
今回何かと厄介になっている人物、ガルマー。