My important place【D.Gray-man】
第42章 因果律
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久々の娑婆。
ではなく、久々の自由。
深々と降り積もる粉雪を見上げながら、雪は大きく味わうように空気を吸った。
体の芯まで冷えそうな、冷たい空気。
けれど不思議と美味しく感じるのは、詰めに詰められた窮屈な檻の中ではないからかもしれない。
「うーっ! さっみーなぁ」
「しっかし本当に此処なのかよ? 応答ねーぞ?」
「可笑しいですねぇ…マリさん達の連絡では、この孤児院に行くって言ってたみたいですけど」
ぶるりと体を震わせながら、大きな煉瓦の建物を見上げるジジ達。
ふざけたコスプレ衣装ではなく、見慣れたいつもの服装へと変わっている彼らの背中を見ながら、雪も視線をついと上げた。
胡桃色の煉瓦の赴きある建物。
"HEARST DRPHAN ASYLUM"と書かれた黒く大きな看板。
パリ警察署を後にし、任務への同行としてリーバーと共にやって来た此処は、極々普通の何処にでもある孤児院だった。
(マリが誤報することは、まずないだろうし…此処にいると思うんだけどな…)
口から真っ白な息を零しながら、ぺたりと目の前の煉瓦に触れる。
冷たく硬い無機質な感触。
少し顔を横にずらして窓の中を覗けば、真っ暗で何も見えない。
雪は眉を寄せて首を傾げた。
「人影も何もないですね…何処かに行って留守にしてるのかな」
「マリ達も一緒にお出かけしたってか?」
「うーん…その可能性も無きにしも非ず…」
「マリやアレンはまだしも、あの神田も大人しくついてったってのかよ」
「……う、うーん…(その可能性は………低い)」
ジジの言葉は的を得ていて、思わず頷き兼ねる。
何かしら事情があって外出したにせよ、あの神田なら余程の理由がないと大人しく従ったりしないだろう。
「それに移動するなら移動するで、連絡の一つくらい寄越すもんじゃねーのか?前もって孤児院に行くって言ってたんだ、尚更だろ」
「……ですよね」
情報が入ってないとなれば、何か問題が起こったのか。
どうにも嫌な方向にしか考えられない。