My important place【D.Gray-man】
第42章 因果律
憑神が抜けて再び抜け殻のような動かぬ体と化した、ティモシーの本体。
そこにドズン、と荒々しく機械の足を着け、傍に着地したのはレベル3のAKUMAだった。
「肉体を消しゃ適合者もクソもないわ!」
大きく振り被った拳は、小さなティモシーの本体だけを狙っている。
『アカン! 本体戻りぃマスター! 憑けるAKUMAはもうおらんッ!』
『オ、オレの体…!』
このまま本体を消されてしまえば、精神だけの自分はどうなるのか。
そんなことを考える暇もティモシーには残されていなかった。
『逃げぇ! マスター!』
「消えろォ! 適合者ぁああ!!!!」
切羽詰った憑神の声と、高笑いするようなAKUMAの罵声が同時に響く。
必死に自分の肉体へと向かうティモシー。
しかしそれより一瞬早く、AKUMAの巨大な拳が振り下ろされた。
ドゥッと響く空気の荒れる音。
「う、わ…ッ!」
ティモシーの本体の口から悲鳴が上がる。
間一髪。己の肉体に戻ることができたティモシーは、振り下ろされた拳の痛みに顔を顰めた。
「……あれ…?」
しかしどんなに待っても痛みはやってこない。
恐る恐る、固く瞑っていた目を開けて見えたもの。
「…ぁ…」
金色の三つ編みを波立たせながら、周りに同じく金色に輝く札を舞わせ立っている後ろ姿。
「君がAKUMAを浄化してくれたお陰で、ダークマターが解けてきた」
「ぁ…あんちゃん…!」
自分を守るように踏ん張り、立っていてくれているその人物は。
「まだ私は終わらないようだ」
中央庁の番犬。
ハワード・リンク監査官だった。