My important place【D.Gray-man】
第42章 因果律
「(死のうが生きようが、)楽な道なんてあるもんか…!」
冷めた目でマリを見るレベル4に、左腕を退魔の剣へと変えたアレンが振り被る。
AKUMAの材料となる人間の魂は、既に亡くなった人のもの。
死して尚、千年伯爵の作り出したダークマターの機械に縛り付けられて人を殺す道具にされている。
このレベル4の材料となった人々の魂もまた同じ。
生きるも死ぬも、この世界は人に優しくなどない。
「うおりゃぁああぁあああ!!!!」
「「!?」」
アレンの退魔の剣がレベル4の体に触れようとした時、人のいないはずの方角から怒鳴り散らす掛け声が響いた。
思わず動きを止めたアレンとレベル4の目に映ったもの。
「ぐげっ!?」
「うげぇ…ッ!」
それは巨体のAKUMA二体を蹴り飛ばす、真っ白な小柄なAKUMAだった。
「なんだ…!?」
「あ?…AKUMA同士で戦り合ってやがる」
「仲間割れか…?」
アレンに続けて、神田とマリの目も其処へと向く。
どう見てもAKUMAだろう、三体の見知らぬ形の悪性兵器達。
なのにどう見ても仲間割れしているようにしか見えない、目を疑う出来事。
「一体何が──」
不思議そうに呟くアレンの頭に、コツンと落ちてくる固いもの。
「んっ?…万年筆?」
足元に転がったそれを拾い上げれば、見覚えのある形をしていた。
持ち主の性格を表すような、汚れや傷一つ付いていない手入れのされた紺色の万年筆。
知っている。
これはいつも自分の傍で監視をしている彼が、メモを取る時に使っていた小物だ。
ということは。
「これ、リンクの──…あだっ!?」
すると立て続けに、またもや頭上から何かが降ってきた。
今度はどすんっ!と大きなもの。
「なっイタタ…え!?」
頭を押さえながら一体何が落ちてきたのかと顔を上げれば、ずるりと腕の間に滑り落ちてくる。
柔らかい人の肌。
高い子供の体温。
「ティ…ティモシー!?」
それは気を失っているのか、目を瞑り動かないティモシーの体だった。