My important place【D.Gray-man】
第42章 因果律
「…わんな…」
変な声が聞こえた気がした。
でも今はそれどころじゃなくて。
"エミリアを守る"
ただその思いだけがオレの頭を支配していた。
「おい…なんの真似だァ? レベル2」
エミリアの頭をわし掴もうとしていた機械AKUMA。
そいつの前に立ち塞がって、太い両腕を布紐で縛り上げる。
…レベル2?
何言ってんだこいつ。
「エミリアに触んな」
とにかくその汚い手を、エミリアに近付けんじゃねぇ…!
「イデッ!? お、おい…! レベル3!」
「あ? んだよ」
「なんかピカッてんだけどこのチビ!」
後ろで悲鳴を上げたのは着ぐるみAKUMAだった。
その腹には、押し込まれているオレの姿。
…ん? オレ?
なんであそこにオレがいんの?
「なんか…ガキがどんどん蒼白く──」
そのAKUMAの言う通り、オレの体は変に光り輝いていた。
髪の毛が額の玉と同じ、明るいエメラルド色に変わっていく。
あそこにあるのはオレの本体だ。
ってことは、オレは今なにかに乗り移ってるってことか?
………なにに?
思わず見下ろす自分の体。
見えたのはひょろ長い体に二つの足。
腕はない。
代わりに黒くて長い布紐のようなものが──…って、こいつ…!?
『発動』
変な声が、聞こえた
『AKUMAに取り憑き取り籠んで、神(イノセンス)化する。さぁ、見したれ。これが"ツキカミ"の本領やっしゃ』
イノセンス化?
一体なんのこと言ってんだ。
っていうかこの声誰だ!?
「イデデデ! こいつイッテェ!」
AKUMAの声にはっとして見れば、オレの本体は髪の先まで全て明るいエメラルド色に染まっていた。
と同時にカッと、強い光を放つ額の玉。
『神化完了──"憑神"』
すると。ざわっとオレが乗り移っていた体が砂のように散っていく感覚に襲われた。
慌ててもう一度自分の体を見下ろす。
変な感覚はあったけど、体は散っていない。
違う。
周りの皮膚だけが散っていくように剥がれ落ちていく。
でも痛くない。
そうして剥がれ落ちた皮膚の下から現れたもの。
それは──
「……は?」
見たこともない、真っ白な体だった。