My important place【D.Gray-man】
第41章 枷
「これでも非常識な事柄は色々と経験してきた身なのよ。この黒服を着込んだ変な連中の腕前も見てるし。ここで雪が嘘つく理由なんてどこにもねぇだろ?」
着ている団服(あれもきっと偽物なんだろう)を示して笑うルパンに、確かに反論はなかった。
それは…まぁ…そうだけど。
「……イノセンスに興味持った?」
だとしたら一番の問題はそこだ。
恐る恐る問いかければ、ルパンはポケットに両手を突っ込んで軽く肩を竦めた。
「いや。面白そーだけど、突っ込んだら色々厄介なモンも付いてきそうだし。やめとくわ」
軽い調子で首を横に振る。
あっさりとした返事は本当に興味を示していないようだった。
…よかった。
世紀の大泥棒に目を付けられるのが厄介だってのもあるけど、こんな世界に巻き込んだらルパン達が大変な目に合う。
無理矢理同盟ではあったけど、ルパンの人柄は……多分、私嫌いじゃない。
数珠を盗まれはしたけど、こうして警察署にまで来て返してくれたし。
全部ではないけど、盗みの真意も話してくれた。
……きっと"犯罪者"という括りにするには勿体無いんだろうな。
ルパンはそれだけ魅力的な何かを備えた"前科者"だ。
「貴女は後悔してないの? そんな戦争に身を染めて」
唐突に問いかけてきたのは不二子ちゃんだった。
表情からして同情しているようには見えない。
多分、純粋な問いかけなんだろう。
「…後悔なんてしてたら、生きていけないから」
後ろを振り返ってばかりなんていたら、ガラ空きの背中から簡単に殺られてしまう。
私がいるのはそんな世界だ。
確かにエクソシストでもない私には手厳しい世界だけど。
「それに、この世界で私は前に進めているから」
ずっと立ち止まったまま、抱えた人達だけを見て生きてきたけど………今は家族以外に見ていたい人がいる。
その人の隣に立って、支えていたいから。
「だから平気」
その人の為なら、どんな世界でだって笑って立っていよう。
世界は同じに楽しんで生きる価値があるんだと、教えていられるように。
そこに迷いはない。