My important place【D.Gray-man】
第41章 枷
艷やかな色気ある女性の声。
その声の出所を確かめるより早く、ピシリと微かな音が鳴る。
聞き覚えがあった。
これはユウが六幻を振るう時の刀の斬撃音と一緒だ。
そう理解すると同時に、断ち切られた小窓の壁が一斉にガラガラと崩れ落ちた。
大きくぽっかりと壁に穴が空く。
人が余裕で通れる程の大きさで。
太刀筋が見えない程の速さで壁を破壊したんだ。
そんな刀での芸道ができる人なんて、私はユウしか知らない。
でも外の暗い夜空をバックに立っていたのは、ユウではなく見知らぬ男性だった。
日本風の着物に袴姿。
手には鍔も何もない素っ気ない刀をもち、夜空よりも深い黒髪と鋭い黒目を持っている。
あ…もしかしてこの人、ルパン一味の一人?
刀の使い手がいるって聞いたことがある。
「ルパンよりその色男の彼の方が、見ていて飽きないもの」
そして更に一人。
和服の男性の隣に立っていた女性が、真っ赤なルージュを引いた唇から艷やかな音色を落とす。
さっきの色気ある声の持ち主は、この女性だったんだ。
ぴったりと張り付いて体のラインが見える、真っ黒なライダーススーツ姿の茶髪の女性。
はっきりと主張された体の凹凸は、同性の私でも目を奪われる程のグラマラスな線を描いていた。
ふんわりとウェーブがかった、ココアブラウンの髪。
顔立ちは東洋系だけど…目鼻立ちがはっきりしている美人顔。
というか全体的に艶めかしい存在感を纏った女性。
何この人……モデルとか?
「そいつァ酷ぇよ不二子。折角会えたってのに、いきなり他の男を褒めるなんてよぉ」
「え? 不二子?…この人が不二子ちゃん?」
思わずルパンをガン見する。
モデル美女を指差しながら。
この人がルパンが度々口にしていた女性?
……。
……………まさかルパン、顔で選んでないよね……もしくは体。
さっき私に優しく笑って納得してくれていたみたいだし。
外見で選んでないよね?
不二子ちゃんのこと。