My important place【D.Gray-man】
第41章 枷
「難しい考えなんて持ってないよ。私は…ユウのことが好きだから。根本にある想いはそれだけでいいでしょ」
人を想う気持ちは何よりも強い原動力になる。
言葉だけでは知っていたつもりだったけど、本当に誰かを想って気付けたこと。
迷いのない言葉でにっこり笑ってそう言えば、ユウの黒い目がまぁるくなった。
あ、なんか珍しい顔。
ちょっと得したかも。
「……」
それから、その目がふと優しい色に変わる。
やんわりと緩む口元。
…あ。
なんかこの表情の見せ方も珍しいかも。
「…そうだな。変に色々勘繰り過ぎた」
「何それ。やっぱりルパンに何か言われたの?」
「……別に」
ってやっぱり何か言われたんじゃないの、それ。
気になるなぁ…あの策士に何言われたのか。
でも素っ気なく応えるところ、多分教えてはくれなさそうだし。
うーん…まぁ、仕方ない、か。
「わかった、これ以上は聞かない。だから帰ったら約束一つ追加ね」
人差し指を立てて言えば、不思議そうな顔をしてくる。
こうして久々にユウの温もりに触れられたら…つい欲が出てしまったというか。
逃げてばかりのイメージがついてるみたいだし、私からも動かないと、ね。
「たっくさんぎゅーして、たっくさんちゅーも下さい」
真面目に頼むのは恥ずかしかったから、ついふざけちゃったけど。
でも願いは真面目に欲しいものなんで、お願いします。
こうして想いを口にすると、改めて強く思ったから。
私はユウが好きなんだなぁって。
この人の温もりを沢山感じていたい。
沢山触れていたい。
それだけで安心できるから。
それだけで、きっと強くなれる。
だから…ユウにとってあの数珠が"枷"でしかなくてもいいよ。
こうして傍で想い人を縛り付けておくことができるなら。