My important place【D.Gray-man】
第41章 枷
少し荒いけど、それは確かな抱擁だった。
「盗られたくらいで弱気になってんじゃねぇよ。お前にとってその程度の"枷"だったのか」
「それは違うけど…」
「なら落ち込んでんな。壊れた訳じゃねぇだろ。取り返しゃいいだけだ」
それは、そうだけど。
というか、その様子じゃルパンからは取り返せてないのかな。
…ユウらしいその答えは、予想してなかった訳じゃない。
でも実際にその口からそう伝えられると、正直ほっとした。
咎めていない。
怒っていない。
思わず肩の力が抜ける。
それを感じ取ったのか、背中に当てられただけだったユウの手が、囲うように緩く腕を回してきた。
………あ。
これ……任務前に私が欲しがってた温もりだ。
「……」
そう悟ると、ついその背中に腕を回してしまっていた。
触れた団服に、自分から顔を押し付ける。
独房に入れられていた所為か、本当に久々の温もりな気がして。
胸がじんとする。
温かくなる。
……でも、これ──
「…ただ、」
「?」
顔を上げると同時に問いかけられた。
「お前はそれでいいのか」
……それ?
目で問いかければ、すぐ近くにある黒い目と重なる。
「枷、だけの存在でいいのかよ」
「……だけ?」
「俺がそう言ったから、従ってんじゃねぇのか」
「…ぇ」
思いもかけない問いに体が固まる。
真っ直ぐ向けられた黒い目は逸らされない。
いつもこうして真っ直ぐにユウは目を向けてくるから、慣れてるはずなのに。
なんだろう。
ざわざわする。
「お前の心はそこにあるのかよ」
その心がざわつく。
ユウは私に別の答えを求めてる?
…私にとってあの数珠が"枷"なだけじゃないこと、気付いてるのかな。