My important place【D.Gray-man】
第41章 枷
「ユウ、何処に…っ」
「少し話すだけだ。こんな野郎共が溢れ返ってる場所、邪魔で話せねぇだろ」
「ま、待て! 勝手に囚人を連れていくな!」
「話すだけつってんだろ。外に連れ出したりしねぇよ」
「だからってな…!」
「ったくうざってぇな。これ以上邪魔するならはっ倒すぞ」
足を止めてギロリと睨み付けるユウに、忽ち看守さんの顔が青くなる。
ああもう。
いくら教団のローズクロスを掲げていても、これじゃただの恐喝だ。
「──それで…話って?」
結局、看守さんを黙らせてユウに連れ出されたのは警察署の面会室。
誰もいない個室で向き合う形は、なんとなく居心地が悪い。
だってその…わざわざ周りに聞かれないようにして話すことなんて、数珠のことしかないよね?
「…お前にとってあれはなんだ」
「あれって……数珠のこと?」
「ああ」
…やっぱり。
一人分の距離を置いて向き合う形で、問いかけてくるユウに居心地の悪さを感じる。
そんなこと今まで聞いてこなかったのに。
なんだろう……ルパンと何かあったのかな。
「……そんなの決まってるよ。ユウが私に言ったでしょ。あれは"枷"だって。身に付けるなら、私がユウの"枷"になるって」
不思議には思ったけど、答えなんて決まってる。
それ以上でも以下でもない。
……私にとっては、形としてユウが私に与えてくれたものだから…特別だけど。
きっとユウにとってはそうじゃない。
ユウにとっては"枷"なだけだ。
だから私もそのまま、ユウが望むままの枷でありたいと思う。
そこに迷いはない。
「私にとっても、あれは"枷"だから。だから……ごめん。私がちゃんと、縛っておかなきゃいけなかったのに…」
盗られてしまった。
ユウの大事なもの。
「……ごめんなさい」
もう一度、ユウに向かって頭を下げる。
返事はない。
ただ、コツリと床を踏むブーツの足音がして。
「ならちゃんと縛ってろ」
「………ユウ?」
背中を、ぐいと押される。
反射で上げた顔は目の前のそれに押し付けられた。
……ユウの真っ黒な団服に。