My important place【D.Gray-man】
第41章 枷
「普通だよ、これくらい。食べないなら貰うけど」
「うえ、これも食うのか?」
「残すと勿体無いでしょ」
「そうだけどよぉ…」
まじまじと見てくるバズの視線に構わず、全く口を付けていないトレイに手を伸ばす。
「食べられる時に食べておかないと、いざって時に力出ないでしょ」
「力も何も、オレら捕まってる身だから」
「何処の戦場だよ此処は」
「先輩、オレのも食べます?」
「いいの?」
真顔でツッコんでくるバズとジジさんは無視するとして。
同じに一口も食べていないトレイを差し出してくるゴズに、思わず目を瞬いて見る。
「全然食べてないじゃない」
「いいんです。オレより雪先輩の方が、美味しそうに食べてくれるから。ご飯も喜びます」
「…そう?」
別に美味しい訳じゃないんだけどね…。味はイマイチ。
ジェリーさんの美味しい料理の味を知ってるからこそ、その差がわかる。
味付けだって舌触りだって悪い。
それでもこれは人の手が加えられた"料理"と言えるもの。
昔は空腹のあまりに木の根っこだって齧ってたからなぁ…それに比べれば充分ご馳走だ。
「ありがとう」
にこにこと笑顔で差し出してくるゴズに、お腹はもう充分満たされてたけど受け取ることにした。
誰も食べないなら、多分廃棄処分になってしまうから。
そんな勿体無いことさせられない。
「相変わらずハムスターみたいに食う奴だなー…」
「ハムスターですか?」
「おう。食いモンと見りゃあ口いっぱいに詰め込んで食ってたんだよ。こいつ」
「…人をがめつい奴みたいに言わないで下さい」
「現にそうだろ? ほら、まだまだあんだ。たんと食え!」
「……」
ただジジさんが食べたくないだけでしょ。
そうジト目で返しても、満面の笑みで頭をぐりぐり撫でられるだけ。
そのいつまでも子供扱いするのやめてくれないかな…私はもうジジさんと初めて会った時の幼い子供じゃないんだから。