My important place【D.Gray-man】
第41章 枷
意図の掴めない泥棒行為。
それも気には掛かったが、それ以上に気に掛かることが一つ。
盗られたままの数珠。
あいつはそれを雪に返すと言った。
見たところ口達者な奴には思えたが、あれがデタラメな嘘だとは考え難い。
…ってことは。
「神田? 何処行くんですか?」
「警察署の独房だ」
「独房って…雪さん達の所っ?」
六幻を鞘に戻して、足早に美術館の階段に向かう。
あの猿が雪の元に現れる可能性は高い。
今度こそ其処でとっ捕まえてやる。
「おい待て美形! 面会時間はとっくに終了してんだ! 行っても会わせられねぇぞ!!」
「知るか。あそこにまたあの猿が現れるかもしんねぇんだよ」
「何ィ!? ルパンがか!?」
後ろからギャーギャーと追いかけてくるガルマーとデカの声。
「訳がわからんが…ッ怪盗Gといいルパンといい、あんたらに好き勝手掻き回されるのは迷惑だ! これは警察の仕事だ、邪魔するな!」
「あ? 警察なら国宝を偽物とすり替えられた時点で気付けよ」
「ぅぐ…ッ」
「神田! 失礼ですよ!」
あまりに喧しいから足を止めて睨み返してやれば、苦虫を噛み潰したようにガルマーの顔が苦々しく歪んだ。
今回だって結局Gを取り逃がしてんだろ。
人の体に精神だけで乗り移って操るだなんて、人智を超えた力だ。
お前ら凡人じゃ手に負えねぇよ。
「煩ぇ。とにかく俺は一度独房に向かう。マリ、お前はGの追跡に集中してろ」
『だが……ああ。わかった』
何か言いたげに言葉を発するも、最後まで形にせず消える。
マリのことだ、俺の心音でも聴いて感じ取ったんだろう。
何言われたって俺が譲る気がないってこと。
このまま放置していても、数珠は雪の手元に戻るかもしれない。
国宝だって今は警察の元に戻ってきた。
表面上で見れば問題は何もない。
…だが。
「あいつもあいつだ」
俺にコソコソ隠しやがって。
後ろめたさがあろうがなかろうが、黙ってたことは気に喰わない。
一度取って締めてやる。
『…神田。あまり怒ってやるんじゃないぞ』
苛立つ俺の気でも伝わったのか。ぼそりと呟かれたマリの言葉は、敢えて無視することにした。