My important place【D.Gray-man】
第41章 枷
──そう思っていたが。
「……本物…?」
「ええ」
「ほ…本当の本当に…っ?」
「ええ、間違いないです」
「本当かッ!? 国宝だぞ! 嘘なんてついたら即逮捕だからなッ!」
「だ、だから間違いないと言っていますでしょうっ! 嘘なんてつきませんよッ!」
慌てて警察共が連れてきた宝石専門の鑑識者の言葉に、その場にいた全員が耳を疑った。
あの猿泥棒がすり替えた国宝は"本物"だと認定されたからだ。
ってことは。
つまり。
「Gが盗んだ王冠が…偽物だったってこと…?」
「……一体どういうことだ」
思わず唖然とモヤシと呟く。
それじゃあなんだ。
あのルパンって泥棒は本物の宝を盗む為にすり替えたんじゃなく、本物の宝を返す為にすり替えたってことか?
…つーか、それって。
「元々本物の国宝はルパン三世の手にあった。…ということでしょうね」
はっきりとその答えを口にしたのは監査野郎だった。
…そういや前に一度盗みに来て、盗み損ねてたってICPOのデカが言っていた。
もしかしてその時には、国宝は猿泥棒に盗まれていたのかもしれない。
本物はその時にすり替えられていて、わざわざまた返しに来たってことか?
「……チッ」
あの猿。
動きや顔だけじゃなく頭もトんだ猿野郎だ。
…いや、この場合は狐だな。
「ルパンの奴め…一体何を考えているッ!」
ドンッ!と荒々しく屋上の柵に両拳をデカが叩き付ける。
「あのルパンが単なる慈善行為などするはずがない! 絶対に裏があるはずだッ!」
「…と言っても、実際本物の王冠は戻ってきたんですし…」
「これ以上、彼を責める理由は見当たりませんね」
モヤシと監査野郎の言い分は一理ある。
大体、一度盗まれた時にすり替えれたレプリカを偽物と気付かず美術館に飾る時点で、このパリ警察はどうかと思うが。
今回は念入りに国宝を鑑識に見せていたし、恐らく本当のことなんだろう。
盗みを一度は働いた大泥棒が、その宝を盗まず律儀に返しに来たってことは。