My important place【D.Gray-man】
第41章 枷
「あの猿野郎…ッ! マリ! あいつの心音追えッ!」
『は? 何言ってるんだ神田。そうするとGの方が追えなく──』
「いいからあいつ追えってんだよ! 逃げるだろうがッ!!」
走り去るミニバン。
マリの能力が使えないなら、足で捕まえるしかない。
苛立ちのままに柵を飛び越える。
が。
「わーッ! 何してんだお前!? 落ちたら死ぬぞ!」
「落ち着け!」
「飛び降り自殺すなーッ!!」
「ッ!? んだよ放せ…! 死ぬかそれくらいで!!」
飛び降りようとした体を止めたのは、後ろから羽交い絞めに飛び付いた警察共だった。
死ぬかそれくらいで!
俺はテメェらみたいな凡人じゃねぇんだよ!
「放さねぇと全員斬るぞゴラ!!」
「ちょっ神田何やってんですか! それこそ僕らも捕まりますよ!」
「全く…! 私達の任務は怪盗Gの捕獲でしょう!」
六幻を振り上げようとすれば、今度はモヤシと監査野郎に止められる始末。
そうやってギャーギャー喚いているうちに、ミニバンはあっという間に夜の闇の中へと消えていってしまった。
「んの…クソッ!」
「落ち着いて下さいって、神田」
「落ち着いてられるかよ! テメェ国宝だって奪われてんだぞ!」
両手を翳して声をかけてくるモヤシを睨み返す。
俺にとっちゃどうでもいいが、この国じゃ重要なもんなんだろ。
それこそ怪盗Gどころじゃないはずだ。
「壊れてないだけまだマシ──」
「そうだ! その国宝が偽物だってのは本当なのかッ!?」
はっとしたようにモヤシの声を遮って、飛び付いてきたのはガルマーだった。
その目は信じられないという色で、モヤシの持つ国宝を凝視する。
ティムが教えてくれなきゃ、すり替えられたなんてわからなかった。
それだけ間近で見ても、精密なレプリカの国宝。
こんなもん作ってやがったなんて。
つかこんなもん、どこに隠し持ってやがったんだあの猿。
「とにかく一度鑑識! 鑑識に回せッ!」
青い顔でモヤシから国宝を受け取りながら、オロオロとガルマーが叫ぶ。
鑑識に見せたって偽物は偽物だ。
意味なんてねぇだろ。