My important place【D.Gray-man】
第41章 枷
「そう心配すんなって! こいつはちゃーんと雪に返しておくからよ。だから怒ってやるなよ、雪のこと」
「ッ…だから馴れ馴れしくあいつのこと呼んでんじゃねぇ!」
腕時計から飛ばしたワイヤーのようなものを美術館の壁に引っ掛けて、一気に降下する泥棒一味。
その後を追おうと柵に足をかければ、
「えっ!?」
驚くモヤシの声が背後から響いた。
なんだ今度は!
「それ本当!? ティムッ!」
「どうしたんですか?」
「なんだよッ!」
苛立ちながら振り返る。
見えたのは、慌てた様子で飛び跳ねながら変な動きを見せるティム。
ジェスチャーなんだろうが、俺にはただの変な動きにしか見えない。
監査野郎と俺には意味不明なもんでも、モヤシだけには伝わるんだろう。
驚いた顔でティムと抱えた国宝を交互に凝視していた。
だからなんだってんだ。
お前しかわかんねぇんだよそれ!
「これッこの王冠、すり替えられたって!」
「は?」
「え?」
予想もしなかった言葉に、思わず監査野郎と動きが止まる。
「Gが盗んだ王冠とすり替えたんだって! さっきルパンが!」
な…ッ
「何ぃいいい!?!!」
「わっ!?」
「!?」
思わず漏れそうになった叫びを遮ったのは、モヤシの後ろから飛び出してきた濃い顔面。
ICPOのデカだった。
「おのれルパンめ! やはり盗んでいきおったかぁあ~!!!」
柵から飛び降りんばかりに身を乗り出して叫ぶ。
そのデカの目線の先には、いつの間に用意されていたのか。
クリーム色の小ぢんまりとしたミニバンのような車。
その開いた屋根から乗り込むと、上半身を乗り出したまま猿泥棒はこちらを見上げた。
目が合う。
俺と視線を重ねたまま、にぃと口角を上げたそいつは──…わざとらしいまでに綺麗なウィンクを返してきやがった。
──ピキッ
すげぇイラッときた。
なんか。