My important place【D.Gray-man】
第41章 枷
「神田!」
「チィ…ッ!」
大きく穴の空いた床から落下する前に、崩れる瓦礫を蹴って飛び出す。
「邪魔すんなつってんだろ…!」
「む…!」
ギンッ!
再び競り合う刃。
いくら相手が人間でも、邪魔するなら界蟲でも飛ばしてやろうかと苛立った。
国宝なんて二の次だ、あの数珠を取り返さねぇと。
「ひゅう♪ 五ヱ門と刀で渡り合うとはねぇ。やるなァお前さん」
「っ…おいモヤシ! お前はあの猿捕まえろ!」
「え? あ、はいっ!」
この侍みたいな男の相手をしていると、猿泥棒には手が出せない。
口笛なんて吹きながら逃げる素振りの見せないそいつに、仕方なくモヤシを呼んだ。
「だァから! オレは盗る気ねぇって言ってんだろ? ほらよッ」
「えっ? わ、とと…!」
捕獲に向かおうとしたモヤシに、猿泥棒が放ったのは国宝の王冠。
慌てて取り落とさないようにモヤシが受け止める。
「な、なんで…?」
「一体どういうことですか? 貴方ともあろう怪盗が、みすみす宝を手放すなど」
「さっきから言おうとしてんのに、おたくらが聞く耳持たねぇから。ちょっくら野暮用で、オレ様此処に来ただけだっての」
鋭い目を向ける鴉の監査野郎に、肩を竦めて軽く両手を上げる。
真意の読めないそいつの笑みを消したのは、
「見つけたぞルパァアアン!!!!」
「げっ! とっつぁん!?」
ドタバタと荒々しく屋上に乗り込んできた、この怪盗専門のデカだった。
「とっつぁんまでいたのかよ…! 用事は済んだ、行くぞ五ヱ門!」
「…御意」
「ッ待ちやがれ!」
ひらりと柵を越えて、あっという間に屋上から飛び降りる猿泥棒。
そいつの後を、あっさりと退いた侍が追う。
何が用事は済んだ、だ。
数珠も置いていきやがれ!