My important place【D.Gray-man】
第41章 枷
ギリギリと競り合う刃。
俺と猿泥棒の間に突如現れた知らない男。
そいつは仕込み刀のようなものを逆手に持ち、俺の六幻の刃を受け止めていた。
「誰だテメェは」
「名乗る程の者ではござらん」
「五ヱ門ちゃんじゃねぇの~! ナイスタイミング!」
「「……」」
…オイ、思いっきり名前呼んでんぞ後ろの猿が。
五ヱ門と呼ばれた男が競り合った体制のまま、静かに溜息をつく。
和物の服に東洋系の顔。
同じ国の出には見えなかったが、どうやらこの男は猿泥棒の仲間らしい。
「邪魔するならテメェも斬るぞ」
「無駄な殺生などせん。…だが拙者の仲間を斬ると言うのなら、相手致そう」
細い切れ目のような黒い目に、一瞬鋭い光が宿る。
くる。
そう悟った瞬間、ギンッ!と弾かれ互いの刃が離れた。
「おい五ヱ門、こっちを先に──」
「もう斬った」
「へ?」
きょとんと猿泥棒が間抜けな声を漏らしたと同時に、バラバラと断ち切られたモヤシの帯が風に吹かれて落ちていく。
「えっ!? い、いつの間に…ッ」
驚くモヤシには、その刀の軌道は見えなかったんだろう。
俺の目でも一瞬しか捉えられなかった。
この五ヱ門とかいう男、剣士としての腕は高い。
「またつまらぬ物を斬ってしまった…」
「つまらぬ物って! 酷くないですかっ?」
「んなことどうでもいいんだよ。盗られたもんを取り返すだけだ、邪魔するな!」
モヤシの叫びを遮って、目の前の男に斬りかかる。
四方から繰り出す斬撃は全て仕込み刀のような刃に防がれた。
キンッ!と刀同士がぶつかり弾く音だけが木霊する。
「──!」
防御のみだった動きが変わる。
ヒュッと風を切るような音がしたかと思えば、またあの目で辛うじて捉えられるだけの軌道が見える。
それはほんの一瞬で、俺の足場を大きく斬り崩した。