My important place【D.Gray-man】
第41章 枷
「特別視してねぇなら、なんでそんな必死になんのよ。雪もお前さんも」
「プレゼントって訳じゃあなさそうだし」と心底不思議そうに猿泥棒ぼやく。
その言葉からすると、雪は必死でこいつから取り返そうとしていたのか。
俺と雪にとっての数珠の価値。
それをいちいち説明する気はねぇし、理解されたいとも思わない。
だからそのぼやきは無視して睨み返した。
「それはこっちの台詞だ。それに金目の価値なんてねぇのに、なんで目を付けた」
泥棒が目を付けるのは金目のもんだろ。
その数珠にそんな価値はない。
大泥棒なんて言われてんなら、そんくらいの目利き持ってんだろうが。
「言ったろー、担保として預かってただけだって。ちゃんと返すつもりだったんだよ。雪ちゃん、そこんとこちゃんと伝えてくれてねぇの?」
「参ったなァ」なんて呟きながら大袈裟に肩を下げて溜息をつく。
そんな姿に眉間の皺が深くなる。
だから馴れ馴れしく呼ぶなつってんだろうが。
「いい加減その馴れ馴れしい呼び方をやめろッ!」
「っと…!」
振り下ろした六幻を、細長い足がひょろりとかわす。
っくそ、ほんとに猿みたいな奴だ。
「あいつとどう言葉を交わしたか知んねぇが、知った口で呼ぶんじゃねぇ虫唾が走るッ」
「どうって、一度は協力し合った身なんだぜ? オレら」
「何阿呆なこと言ってんだ。付くならもっとマシな嘘つけ」
泥棒と協力なんてするはずねぇだろ。
苛立つままに吐き捨てれば、猿泥棒の目が丸くなる。
なんだそのツラ。
「…あれ。もしかして雪ちゃん、オレ様のこと話してねぇの?」
まじまじと俺を見てきたかと思えば的確に突いてきた言葉に、思わずピクリと六幻を握る手が揺れた。
…確かに雪はこいつのことを詳しくは話さなかった。
「へぇ…健気だねぇ。恋人には黙ってたって訳か」
黙る俺に、にんまりと弧を描いて口元に笑みを作る。
そう笑いながら向けられた言葉に、苛立ちが増した。
こいつ、モヤシ並みに俺を苛立たせる奴だ。