My important place【D.Gray-man】
第41章 枷
自分でも顔が険しくなるのがわかる。
そんな俺を見て、猿顔の泥棒は口の端を大きく上げると笑いやがった。
「へぇ。どんな恋人かと思えば、きっれーな顔した男前じゃねぇの。雪も隅に置けねぇなぁ」
だから慣れ慣れしくあいつの名前を呼ぶんじゃねぇよ。
「…あいつから盗みやがったのか」
大切なもんを盗まれたと言っていたが……これだったのか。
なんで俺に伝えるのを渋ったのか、なんとなく理解できた。
"枷"と言って預けたんだ、決して軽いもんじゃない。
俺の"枷"になると雪は応えたんだ、その覚悟も安易なものじゃなかったはず。
…それを奪われたから、隠れるようにコソコソしてたのか。
「チッ」
そんなことで後ろめたさなんざ感じてんじゃねぇよ、あの馬鹿。
「そんな怖い顔してたら、折角の綺麗なお顔が勿体無いぜ」
「るせぇな…そいつを返せ!」
気障ったらしく肌を撫でるような台詞は、神経を逆撫でするもんでしかない。
感情のままに一気に間合いを詰める。
「おっちょッストップストップ!」
刃の切っ先を四方から打ち込むように突き出す。
ひょろひょろと揺れるように細い体は、紙一重でそれを避けていく。
何がただの人間だモヤシの奴。
Gに比べりゃこいつの方がよっぽど厄介な動きをしてる。