My important place【D.Gray-man】
第41章 枷
✣
「っとぉ!?あっぶねぇ~!」
「…チッ」
振り下ろした六幻は、紙一重でかわされた。
思わず舌打ちして、飛び退くそいつを睨み付ける。
すばしっこい猿顔の痩せ男。
…これか。
雪が猿だと呟いてた理由。
「お~怖っ。そんな殺気ビシビシ当ててくんなよ。オレはこいつ盗む気ねぇからよ」
「ほざけ」
ティムから奪っておいて、何が盗む気はないだ。
大体泥棒の言うことなんざ誰が信用するかよ。
雪と約束した。
こいつが現れたらとっ捕まえてやると。
だから逃がす訳にはいかない。
「神田っ相手は人間ですよ!」
「ただの人間じゃねぇだろ」
横入れしてくるモヤシに目もくれず、六幻を目線の高さに構える。
真っ直ぐにその切っ先をルパンだとか名乗る泥棒に向けて。
「おい、落ち着けって。平和的にいこうぜ」
両手を軽く挙げて、まるで降参とでも言うかのようなポーズで笑いかけてくる。
ヘラッと腑抜けた笑みは、馬鹿兎のそれとなんとなく似通っていた。
…兎よりこいつの方が胡散臭いが──
「!」
二撃目を繰り出そうとした時。
思わず目を疑った。
「…っ」
「ん?…おぅわッ!?」
驚いて止まったのは一瞬。反射で間合いを詰めて真横に六幻を振るう。
掠った切っ先がそいつの頬の皮膚を裂いて、赤い滴を飛ばす。
「あっぶねぇ…!」
「…んで」
なんで。
「なんで、テメェがそれを持ってやがる」
目を疑った。
降参するように軽く挙げた左腕に、身に付けられていた"それ"に。
見間違えるはずなんてない。
俺が"枷"として付けていたものだ。
雪を縛り付ける為に、あいつにやったもの。
なんでそれを、こいつが持ってる。
「それ?……あ。」
大きく飛び退いた後、俺の視線の先を追うようにしてその目が俺と手首の"それ"──臙脂の数珠を交互に見る。
すると何か悟るようにポンと手を叩いた。
「もしかしておたくが、雪の恋人?」
…なんで馴れ馴れしくあいつの名前呼んでんだ。