My important place【D.Gray-man】
第41章 枷
間違いない。
ひょろりとした足を組んで柵の上に座り、ぷらぷらとティムの尻尾を振っている。
その顔はどう見ても、手配書にあった顔と同じもの。
でもいつの間に現れたんだ。
気付かなかった。
「あ、オレ様のこと知ってんのね」
僕の声に反応した彼の目が、こちらに向く。
その言葉からして、ルパン本人なのは間違いないようだ。
じゃあ…この人が。
フランスの世紀の怪盗と謳われている、あのルパン三世?
「おたくら、警察とは違うみてぇだけど…只者じゃないことは確かみてぇだな」
のんびりとした口調なのに、少し鋭さも感じる。
そんな彼は柵に腰を下ろしたまま、ティムの尻尾を片手で摘まみ。
もう片手には王冠を──…あ!
「っティム!」
「ガァッ!」
「おぉっと」
王冠に向かって喰らい付こうとしたティムに、呆気なく尻尾を摘まんでいた手を離す。
と同時にひょいと持っていた王冠を持ち上げて、ルパンはティムの動きをかわした。
その一連の動作は地味でも目を見張る、手慣れたもの。
どうやら腕のある大泥棒だってことは本当らしい。
元々王冠は一度ルパンに奪われかけて、警察が死守したらしい。
だからこそもう一度ルパンは王冠を盗みに現れるだろうと、銭形警部が口調荒く主張していた。
その読みは当たったんだ。
「王冠を返せ!」
「まぁまぁ。そう興奮しなさんなよ」
柵の上に立ちながら、肩を竦めて両手を軽く挙げてくる。
そのにんまり笑った口元が先の言葉を続ける前に、
「オレはただ、ちょっくら──」
ガキィンッ!
僕より先に飛び出した影が、ルパンに斬りかかった。