My important place【D.Gray-man】
第41章 枷
「チッ、この監査野郎"鴉"だったのかよ」
「カラス?」
「中央庁お抱えの戦闘部隊だ」
僕の方へと退いた神田が、毛嫌うように舌打ちする。
その口から発せられた名は、知らないものだった。
戦闘部隊?
リンクってそっち方面の人だったんですか?
「よく知らねぇし興味もねぇが、ガキの頃から"教育"されたとかで無駄に戦闘能力が高い奴らだ」
鴉…じゃああの緋装束の人達もそれに当たるのかな。
というか中央庁って、黒の教団や他支部を監視するだけの偉い組織だと思ってたけど。
そんな戦闘部隊を抱えてたんだ。
「おい、どうなってんだ!」
思わず考え込んでいると、別の第三者の声が響き渡った。
「こっちのG…お前警官じゃねぇか!」
「じ、自分でも何がなんだか…」
見れば、階段を使って上がってきたんだろう。ガルマー警部と複数の警官が、這い蹲っていたあのコスプレ姿のGを取り囲んでいた。
仮面が外れて見えた顔は……あれ確か…神田が放った王冠を受け取っていた警官の人だ。
「王冠を手に取って…それからの記憶が…っ」
「ふざけんな!」
「私じゃない! 私じゃないんです! 信じて下さい、違うんですーっ!!」
胸倉を掴んで怒鳴り散らすガルマー警部に、必死に首を横に振る。
「私じゃないんだぁぁぁ~!!!」
「……ぷっ」
そんな必死な形相の警官に、不釣合いな笑い声が混じる。
目を向ける。
其処にいたのは、リンクの姿をした怪盗Gだった。
「はははっ!」
口元に手を当てて、さも面白そうに笑っている。
必死に弁護して泣き叫ぶ警官を見て。
それは演技しているような、あのわざとらしい高笑いじゃなかった。
本気で面白がって笑ってる。
「…何か面白い?」
「ん?」
だから思わず問いかけた。
「だっておかしいでしょ、大のオトナがあんなふうにさ」
返ってきた答えは至極簡単。
慌てふためくあの警官を見て、純粋に面白がってるんだ。
…僕には笑えない。