My important place【D.Gray-man】
第41章 枷
こっちに向かって薄く笑いかけてくる、リンクを乗っ取った怪盗G。
その後ろに見知った影を見つけて、軽く息を吐いた。
「だって"僕ら"は君を捕まえに来たんですから」
その言葉の意味をGが理解する前に、背後から見知った影が斬り掛かる。
ギィインッ!
まるで鉄と鉄がぶつかり合うような音がその場に響く。
それは背後から六幻で斬り掛かった神田と、Gのナイフがぶつかったからじゃない。
「これは…ッ」
神田の動きを止めたもの。
それは咄嗟に振り返ったGが、コートの袖から飛ばした無数の札だった。
神田の体を囲うように浮かぶ"縛"と書かれた札。
あれ…見覚えがある。
「秘術"縛羽(しばりばね)"──縛(バク)!」
札が囲った空気がビキッと軋む。
真下のコンクリートの床が、円を描いてベコンッと凹む程に。
だけど間一髪、その中から抜け出た神田は頭上を跳ぶと僕の方へと後退した。
あの札を使った術、前に見たことある。
『体が少々重いでしょうが、害はありません。左手を拘束する為だけの術ですので』
思い出したのは、暗い部屋で左腕に巻き付けられた沢山の札だった。
師匠と最後に話をした日。
会う前に左手の拘束が必要だとルベリエ長官に言われ、仮面を被った緋装束の人達に不思議な術をかけられた。
術のかかった左腕は物凄く重くて、まるで鉛の腕を取り付けられたような感覚だった。
全く動かせない左腕。
生易しい術なんかじゃない。
ノアの方舟を操れた僕は教団に味方か疑われていて、それ故の拘束だと思っていた。
その時は。
僕は"14番目"というノアのメモリーを宿した体。
"14番目"が現世に復活する為の器。
そう師匠に告げられるまで。
「危な~!」
慌てふためきながら距離を取るリンクの姿は、やっぱり普段のリンクとは似ても似つかない。
Gは身体能力だけでなく、その者が持つ特異な能力まで扱えるのか。
これは本当に面倒だ。
僕やマリや神田がもし乗っ取られてしまったら、イノセンスを使って暴れられる可能性もある。