My important place【D.Gray-man】
第41章 枷
『アレン!? どうした!』
耳に取り付けたイヤリング型無線機から、マリの声が届く。
「マリ、リンクが…」
『監査官か? 彼がどうした?』
「肩書きからてっきり頭脳派かと思ってたのに…」
『は?』
シャコン、とリンクが服の袖から大振りのナイフを弾き出す。
息つく暇なく僕目掛けて跳んだ体は、避ければ近くにあった屋上の壁を抉り壊した。
そのナイフ一本で。
「そういえば…っ、前に…本部が攻め込まれた時、助けて貰ったことがあったっけ…」
『わかるよう言ってくれ、アレン』
到底常人じゃこなせない力だけど…教団本部が一人のノアと大量のAKUMAに襲われた時、同じように僕に振り落ちてくる巨大な鉄パイプをナイフ一本で切り壊してたっけ。
「ヒュー! 何よこの人、超ハイスペック!」
自分の体を見下ろして、爛々と目を輝かせるリンク。
そして這い蹲ったままのコスプレ姿のGは、死んだように動かない。
…これはどうやら。
「リンクがGに乗っ取られたっぽい」
『…みたいだな。今聞こえた』
それは通無線越しのリンクの声なのか、心音の違いか何かなのか。
どっちにしろ、マリがそう言うならやっぱりあれは怪盗Gなんだろう。
外見がリンクなだけで、中身は別人。
それでもさっきのGとはまるで違う動きをしている。
…ってことは、Gは乗っ取った人の体が持つ能力を扱うことができるのか。
………面倒だな。
「さぁ、ワタシの王冠返して? オニーサン」
さっき這い蹲ってた時とは違う。
最初に現れた時と同じ、わざとらしい気取った口調で話しかけてくる。
「返したら君、逃げるでしょ? それは困るんですよねー…」
弾き飛ばされないように抱き込んでいた王冠を、傍で飛ぶティムに差し出す。
ムキッと大きく開いてギザギザの歯が並ぶ口が、ぱくりと王冠の縁を咥える。
とりあえず厳守すべきものは厳守しないと。
ティムに持たせていれば安心かな。