My important place【D.Gray-man】
第41章 枷
「く…っ!」
屋上の外に放り出されるように飛ぶ王冠に、床を蹴り上げて手を伸ばす。
がつんっと体がぶつかったのは屋上の柵。
「あ……危なかった…」
その柵から身を乗り出して落ちる一歩手前。
ぷるぷると伸ばした腕の先の掌。
更にその先の、指の先端。
そこに辛うじてぷらぷらと揺れながら引っ掛かっている王冠に、思わず盛大な溜息をつく。
か、間一髪…。
「リンク、経費は無事ですよ」
経費というか、借金というか。
ほっとしながら振り返れば、後ろに立っていたリンクが──
「で、なんだっけ? Gを捕まえるだっけ?」
にんまりと口角を上げて笑った。
「できるかな?」
べっと舌を出して挑発するように笑う様は、まるで普段のリンクとは似つかない笑顔。
…普段のリンクが笑ったとこなんて見たことないけど。
その時、ゾクリと寒気がした。
「っ!」
反射的に体を回転させてその場から飛び退けば、後を追うようにリンクの体が急接近する。
「リンクっ?」
ガキンッと飛ばされた蹴りを、咄嗟に王冠を庇いながら立てた腕で受ける。
なんだ急にっ?
攻撃を仕掛けてくるリンクの意図がわからない。
……もしかしてこれは──
ドカッ!
鈍く重い蹴りが鳴る。
「げっ…!」
僕の顔面の左側面に思いっきり。
弾き飛ばされた体をなんとか立て直して、ザザッと床をブーツで滑り止めた。
いった…ッ
「ぺっ」
唾を吐けば、顔面への蹴りで口の中が切れたのか。赤い唾が床に付着した。
全く、微塵も手加減してないな。