My important place【D.Gray-man】
第41章 枷
門を通り過ぎ、向かったのは美術館前の広間。
雪が積もってできたのか、薄い水場と化してる其処に足を踏み入れる。
ぱしゃ、と水を踏む音が鳴る。
「ヒュー♡」
「く…っこのォ!」
「捕まえろぉお!!」
窓硝子を突き破って現れた、雪達が着せられていたふざけたコスプレ衣装と同じツナギ服。
顔には一つ目玉の仮面を付けて、バウンドするように器用に警官の頭上を踏み付けて飛ぶ姿。
どうやらあれが怪盗Gの衣装だってのは本当らしい。
「今度こそ頂きますよ! 国宝はこの正真正銘、本物の怪盗Gが! はっはっはっは!」
芝居がかった笑い方をするそいつの手には、煌びやかに光る王冠。
警察の奴ら、簡単に怪盗Gに国宝を盗ませちまったのか。
根性足りてねぇな。
背中を向けて後ろ向きに駆けてくるそいつは、俺の存在に気付いていない。
気配を消したまま、角度を合わせるように肩にかけていた六幻を僅かに上げた。
「はっはっは──ウギャッ!?!!」
勢いを付けて駆けていたそいつの頭に、パンッと六幻の鞘が当たって弾ける。
弾けたのは六幻じゃない。ぶつかったGの体の方だった。
バランスを失った体は勢いのまま、水場の中に顔を突っ込んで転倒する。
「痛っ…」
「よぉコソ泥。ちょっとツラ貸せよ」
頭を押さえながら、よろよろと上半身を起こす。
そんな座り込んだままのGは、まだ俺に気付いていない。
『王冠は壊すなよ、神田』
「面倒くせ」
ゴーレムの向こうから忠告してくるマリに、つい舌打ち一つ。
王冠なんざ知ったことか。
そう返したいが、国宝ともなれば無視する訳にもいかない。
面倒臭ぇな。