My important place【D.Gray-man】
第41章 枷
✣
なぁアレン…
そういや初めて聞くが、お前ティムは好きか?
預けると言って渡したが…初めからお前にやるつもりだった
息を吐き出す。
暗い夜空に上がっていく、真っ白な吐息。
そこに触れて消えていく小さな粉雪。
左肩の上から聞こえるその人の声は、よく聞いていたような荒々しい罵声じゃない。
飄々とした横暴な声でもない。
ただただ静かに、囁くような声だった。
ティムにはもう自由(すき)にしていいと言ってある
"14番目"の意志を継いでる俺の言葉なんて、聞きたくもないかもしれんが
もしお前が俺や"14番目"に決められた道を歩かされてるんだと思ってんなら
違うってことだけ、言っときたくてな
ちらほらと視界に映る粉雪を見上げたまま、ゆっくりと目を瞑る。
耳に聞こえるのは、隣に座っているリンクの静かな呼吸音と、その人の声だけ。
道は歩いた後にできるもんだ
踏みしめられた土が堅くなり、跡と残って道に成る
自分の歩く道をつくれんのは自分だけだ
…だからもう"マナ"の仮面を被るのはやめろ
そっと目を開く。
相変わらず眼下に広がるのは、ちらほらと降り落ちる粉雪だけ。
歩け、独りで
まだ諦めてないんなら
…プツリと途切れる小さな音。
声の再生を終えたティムが、僕の左肩で身動ぎする。
吐く息は白く目の前に形を成して、すぐに消えていく。
その真っ白な吐息を見つめながら──…思い出す。
あの日のことを。