My important place【D.Gray-man】
第41章 枷
「とにかく独房では目立たず大人しくしてろよ。ジジ達の傍にいろ」
「うん、わかった」
俺の中で頭を擡げそうになる欲を抑えるように息を吐きつつ、硝子から手を離す。
「ジェリーの飯が食いてぇよぉ~!」
「オレもですぅうう!」
「獄中の飯はもう嫌だーッ!」
「オイ、ずらかるぞモヤシ。そいつら引き剥がせ」
未だにモヤシに縋ってわんわん泣いてるジジ達に、いい加減にしろと声をかければ。
「鬼! 情けってもんはねぇのかお前はよ!」
「神田さん酷い…っ」
「やっぱお前みたいな奴に雪はやれるか…!」
ギャーギャー煩く俺に向かって喚いてくる。
…うざったい奴らだな。
男なら泣き言なんか言わずに大人しく待ってろ。
「釈放の方法は考えるつってんだろ。うだこだ言わずに黙って待ってろッ」
「ひィ…!」
「わ、わかったわかった!」
「わぁあごめんなさいぃ!」
もう一発蹴りを入れてガラスを凹ませれば、やっとモヤシから離れて後退る。
最初からそうしてろ、全く。
「はぁ…もう少し丁寧に言ってあげられないんですかね…」
呆れた顔を向けてくるモヤシを思わず睨む。
テメェがいつまでもちんたらしてるからだろ。
…そうは思ったがまた言い合いになるのは面倒で、無視することにした。
「それはそうと、雪さん。釈放までもう少しかかりそうですから。この中ではジジさん達の傍にいて下さいね」
「うん。気を付けるよ」
俺と同じことを口にするモヤシに、雪が苦笑混じりに頷いて返す。
「あらぁ心配ないわよ~! アタシだって三ヶ月も此処にいるのに、不祥事は起こってないんだから!」
「「……」」
そんな雪の肩に手を置いて、ばちりとウィンクしてくる無精髭の男。
…不祥事が起こることの方が怪盗以上の事件だろ、テメェの場合。
大袈裟にウィンクしてくる女男に、突っ込みはしないものの恐らくモヤシと俺の心境は同じだったと思う。