My important place【D.Gray-man】
第41章 枷
「裁判になんてかけられたくねぇよーッ!」
「オレ達、犯罪集団なんかじゃありませんから~!」
「マジで囚人になっちまうッ!」
「……」
滝のように涙を流すジジ達。
意思表示はしなくとも、雪も同じに不安は感じているんだろう。
ただ一人黙り込むその顔は、暗い。
「んな顔すんな。Gの調査はする」
だから声をかけた。
雪にだけ聞こえるように、硝子一枚隔てたすぐ傍で。
「そのルパンって奴も見つけたらとっ捕まえる。お前を囚人にしたりしない」
目が合えばぱちりと瞬く。
暗い色の瞳に俺を映し出して。
まじまじと俺を見上げていたかと思えば、ぺたりと硝子に張り付く右手。
「うん…」
俯き加減に、小さく頷きながら。
その仕草はまるでこちらに手を伸ばしているようにも見えて、気付けば触れていた。
硝子越しの、俺より一回り小さい手に。
感触はない。
肌に伝わるのは冷たく固いガラスの温度だけ。
それは少しだけ心に隙間を空けるような感覚に陥らせた。
…なのに何故か、それ以上の別の感覚が浮かぶ。
触れてはいない。
けれど、心で触れている感覚。
"枷"として雪を縛り付けた。
体だけじゃなく、心で俺の傍にいろと言った。
その見えない鎖が、こいつと俺を繋ぐ。
上手くは言えないそれは…安心感のようなものだった。
「…ありがと」
じっと俺の手を見つめていた目が、上を向いて視線が重なる。
少しだけほっとしたように、肩を下げて苦笑する。
そんな雪の姿に、少しだけ空いた心の隙間が埋まる感覚。
満たされる。
触れていなくても、確かに傍にあるその存在に。
アルマだけを思い自分で自分を縛り付けた時には、微塵も感じなかったのに。
こいつを"枷"にしてしまったが故に生まれた"甘さ"。
そんなもの微塵も興味なかったのに。
必要となんてしていなかったのに。
…今はなきゃ困るものだ。