My important place【D.Gray-man】
第41章 枷
「おいマリ、なんだベーゼって」
どうせ目の前で赤面してる雪は教えちゃくれないだろう。
だから代わりにマリに問いかけた。
すると返されたのは言葉じゃなく表情だけ。
取り繕うように笑って、曖昧にはぐらかされる。
…なんだその反応は。
「baiserは一般的に接吻と似た意味です。ですがこの地では…コホン。もっと深い意味で使われるでしょうね」
意外にも答えをくれたのは監査野郎だった。
ただいつもは巻き舌並みに流暢にスラスラ出てくる言葉を、途中で濁すように詰まらせていたが。
深い意味って………………どういうことだそれは。
「…おい」
「ひっ…顔怖っ! 違うから! 色々誤解だから!」
「ルパンめ…うら若き乙女の心だけでなく、体にまで手を出すとは…許せん!」
「銭形警部はいい加減カリオストロから離れて!」
硝子越しのその存在を睨み付ければ、忽ち赤から青に変わる顔色。
違うってんならなんだってんだよ。
「とにかくルパンを逮捕してくれたらわかるから…っ」
「わかるなら先に言ったっていいだろうが」
「や、それは…心の準備というものが…」
「なんだそれ」
「…そんな怖い顔に言えないというか…」
「あ?」
もごもごと口籠りながら、どんどん恐縮していく雪の姿。
なんだってんだ一体。
「あー…あんたら。ルパンルパン言ってるとこ悪いが…」
そこに割り込んできたのはガルマーの声。
振り返れば、Gの予告状を開いて目を通す姿が其処にあった。
「この予告状は、どうやらルパン三世からじゃなさそうだ」
そう、はっきりと口にして。