My important place【D.Gray-man】
第41章 枷
「じゃあまたルパンが現れる可能性は…っ」
「ああ。高いだろう」
「……誰だ、そいつは」
齧り付くように硝子にへばり付いて期待に満ちた声を上げる雪に、笑って応える知らない男。
だから誰だってんだよ。
「申し遅れた。私はICPOの銭形という者だ」
「ルパン逮捕専門の国際警察の人なんだよ」
「ルパンって…聞いたことあります。あの世紀の大泥棒とか言われてる人じゃありませんっ?」
「うん」
「やっぱり!」
興奮気味に声を上げるモヤシに、雪が頷けば更にその顔は弾んだ。
…誰だそのルパンって奴。
「そんな大泥棒までこの地に現れていたのか」
「彼もイノセンスの可能性はあるのでしょうか」
「さぁ、そこまでは…」
どうやらマリと監査野郎もその"ルパン"って奴を知っているらしい。
興味あり気に呟く二人に、雪が苦笑混じりに首を傾げる。
だから誰だ、そのルパンって奴は。
「雪の怪我の原因も、そのルパン絡みでなぁ~」
「えっ! 雪さん、ルパンと接触したんですかっ?」
「うん…まぁ…」
「そいつを捕まえ損ねて、足挫いちまったんだよな」
「大泥棒を捕まえようとするとはな。大変だったんじゃないか?」
「いやぁ、無我夢中で…あはは…」
わいわいと弾んで雑談するモヤシやマリ達。
その中心で苦笑いを浮かべる雪。
足の怪我の原因も気にはかかったが、それよりも。
「だから誰だよ、そのルパンって奴は」
お前ら当たり前に飲み込んでるが、俺にはさっぱりなんだよ。
苛々と目の前の雑談連中に低い声をかければ、そいつらの目が向い…
……なんだその鳩が豆鉄砲喰らったような顔は。