My important place【D.Gray-man】
第41章 枷
「誰が土下座なんざするか。貰う時は貰う」
「っ!? ユウも何言ってんの!?」
雪の亡き両親相手になら挨拶の一つでもしないこともないが、なんだってテメェに土下座しなきゃなんねぇんだ。
聞き捨てならないバズの言葉に睨み返してやれば、でかい図体が硝子越しに目の前に立ち塞がった。
「ほぉう…言いやがったな。お前に雪の何がわかるってんだよ。オレはこいつと長年同じ釜の飯を食って、同じ床で寝て、同じ戦場を駆けてきたんだ。そんな大事な仲間を、ぽっと出の男なんかにやれるか」
「同じ飯なら食ってる。同じ床でも寝てる。戦場なんざテメェより何度も経験してる。比べるまでもねぇ」
「ち…ちょっとちょっと待って…!」
「雪…お前どこまでいったんだ…Bか? Cか。避妊はしろよ。できれば孫より娘の晴れ舞台を先に見たいもんだ」
「だから私ジジさんの娘違う!」
さっきからぎゃあぎゃあうるさい雪は、顔を真っ赤にしたまま。その顔を隠すように両手で覆うと、とうとうその場に蹲ってしまった。
「もうやだ皆言いたい放題…っそういうことは余所でやって下さい…!」
「だってなぁ雪! お前もこんな男選ぶなん」
「だまらっしゃいッッ!!!!」
「おぶふッ!?」
蹲って顔を隠す雪に、バズが声を張り上げた時だった。
突如横から飛び込んできた屈強な肉体が、その巨体を弾き飛ばしたのは。
「全く、黙って聞いていれば! 寄って集って女の恋路荒らすなんてゲスな男のすることよ!」
「ボ…ボネールさん…」
「もう大丈夫よ、雪ちゃん。アタシがこいつら黙らせてあげるから」
雪を守るように立つ屈強な肉体の持ち主。
ばさばさの付け睫に、分厚い唇を覆う無精髭。
それはあの女男だった。
バズを弾き飛ばした拳をボキリと鳴らして凄む顔は、元が元なだけに威圧が半端ない。
…囚人内でのボスだというのは本当のことらしい。