My important place【D.Gray-man】
第41章 枷
「ああ、また喧嘩してる…!」
「全く…下らないことでいつも時間を無駄に消費し過ぎです」
「ァあ?」
下らないつったか今。
頭を抱えて呻る雪は放っておくとしても、監査野郎の言葉は気に入らなくてギロリと睨む。
漏れる殺気が増せば、慌てたように視界の隅に雪の顔が映り込んできた。
「わかった、わかったから! ちゃんと気を付けるから! 危機感持つから、周りに殺気飛ばすのやめよう!」
意識を向けさせるように、硝子越しにぺたぺたと両手を叩いてくる。
どうどうと言うその宥め方は動物扱いされてるようで気に喰わなかったが、雪の言葉は俺の望んだものだったから。仕方なしに殺気を静めてやった。
「…言ったからにはちゃんと周りに気を配れよ」
「うん、わかった。だからユウも、アレンとあんまり喧嘩しないでね」
「喧嘩売ってきたのはあいつの方だ」
「それでもっ一回踏みとどまろう。その気持ち大事っ」
「…チッ」
ね、と賛同させるように言う雪に、それ以上抗う気はなくなってしまった。
仕方なく舌打ち混じりに視線を外せば、傍で俺らを凝視しているジジと目が合う。
…なんだその鳩が豆鉄砲喰らったような顔は。
「え…待て待て待て。そんな間柄って…お前らそんな仲だったっけ…?」
そんな仲ってどんな仲だ。
「アレンもあんまり汚い言葉使っちゃ駄目だよ。周りが吃驚するからね。リナリーとかね」
「…先に汚い言葉使ったのは神田です」
「うん、そうだね。ごめんね、私を気遣ってくれたんだよね。ありがとう」
「……はい」
シュンとするモヤシを硝子越しに宥める雪は、ジジのその視線に気付いていない。