My important place【D.Gray-man】
第41章 枷
目の前にある鉄の柵を掴んで、雪を拝む連中を睨み付ける。
「拝み倒すくらいなら好きにしろ。だがこいつに邪な欲でも向けてみろ。テメェら全員叩っ斬るからな」
ミシ、と音がして軋む柵に、硝子越しの野郎共の顔が一斉に青褪めた。
「ひィっ!?」
「な、なんだこのクッソ怖い顔のにーちゃんは…!」
「お、落ち着いてユウ。顔怖い。柵壊れる」
「そうさせてんのはどこのどいつだ。お前も危機感ってもんを少しは持て」
後退る野郎共の盾になるように、目の前で辛うじて逃げずに座り込んでいる雪が冷や汗流しながら宥めてくる。
無自覚で俺の加虐心を煽るような奴だ。
こういう自分に疎い奴は、はっきり言うに限る。
「そんなナリでも女だろうが、野郎の巣窟じゃマスかく対象にされんだぞテメェ」
「え、何そのいきなり卑語のぶっ込み。ってかそんなナリって。なんか聞き捨てならない…!」
「そんなナリはそんなナリだ」
怪盗Gなんていうふざけたツナギ衣装の、色気なんて微塵もねぇ阿呆な恰好のことだ自分の姿よく見ろ。
「…マスかいてるのは自分なんじゃないんですかね」
「……あ?」
心外だとばかりに主張する雪を呆れ顔で見ていたら、聞き捨てならない言葉に一瞬時が止まる。
声の主に視線を変えれば、不快な顔したモヤシが其処にいた。
「なんつったテメェ」
「あれ、聞こえなかったんですか。雪さんでマスか」
「アアアレン! 貴方がそんな卑語言っちゃ駄目!」
「アレンのイメージが!」とかなんとか阿呆なことほざく雪は無視して、喧嘩を売ってくる白髪頭を睨み付ける。
何が気に喰わねぇのか知んねぇが、俺とこいつのことに口挟んでくるんじゃねぇよ。
「雪さんの容姿を貶すような発言、やめてくれますか。いくらそういう間柄だからって、親しき仲にも礼儀ありですよ」
「テメェが言うな。外面が分厚いだけの腹黒野郎が」
雪の前で屈んでいた腰を上げて、至近距離でモヤシを睨む。
何が親しき仲にも礼儀ありだ。
仲間内でも遠慮なく金銭巻き上げる、金の亡者の癖に。