第5章 四番隊のお仕事2
(しまった。涅隊長だ。)
遠目からでもすぐ解る異様な姿……と言ったら失礼なのだろうか。
仮面なのか、メイクなのか、ともかくすぐ解った。
卯ノ花隊長からくれぐれも涅隊長には近づくな、ときつく言われていた。
(外出中の予定を確認してから来たけど、思ったより早く戻って来たみたい。)
他人とコミュニケーションがあまり取れない優姫の耳にも恐ろしい噂が入るほどだ。
実際に接触してしまったら何をされるか……
視線を落として、ゆっくりと後ろを向く。
このままやり過ごしたい。
動かず息を殺して……
「おまえ、変わった霊力を持っているねぇ。」
いきなり頭を、いや、髪を思いきり掴まれ引っ張られる。
「や、痛いっ……」
「いいデータが取れそうだ。直ぐに研究室に運べ。」
プシュッという小さな破裂音と共に鼻先に怪しい煙が立ち込める。
(変な匂い……ガス?)
クラリと目眩がした次の瞬間には地面に倒れていた。
手足に力が入らない。
「あ、え、あぅ、うぅ……」
喋ることも出来ない。
「取り合えず今採ってきたサンプルのデータ整理の後から彼女のデータにかかろう。それまでどこかのラボに寝かせておけ。」
「はい、マユリ様。」
後ろに控えていた涅副隊長が軽々と優姫を抱えあげる。
(いやぁぁぁーーーー!解体されるぅぅぅーーー!)