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その胸に抱くのは~BLEACH~

第5章 四番隊のお仕事2


あの殺気を感じとれたということは、あやふやながらも四番隊の七席の山田君より霊力は高いってことやね。


隊舎で作業をする優姫を見た時市丸は直ぐに気づいた。
優姫は他の隊士とのやり取りを極端に避けている。
柔らかく笑うが決して心を見せない。
他人との関わりが深くならないように、長年に渡って染み付いた癖。

よく解るよ。
そうやって生きてきたんやね。
そんな笑顔、泣き顔にしか見えんよ。


自分の部屋に無理矢理引きずり込んで腕の中に閉じ込めた。
怯えて震える彼女が無償に可愛くて……
拐った唇は甘くて……
途端に崩れたポーカーフェイス。
ボクとは年季の入りかたが違うし、まだまだやね。
だけど、真っ赤になって怒る彼女もやっぱり可愛くていつの間にかボクまで素になってたわ。


ボクの前では感情を押さえ込まんでええよ。
そんな人形みたいなキミは見たないよ。
ボクの前では本当の笑顔でおって、涙を隠さないで素直に泣いてええよ。

声をあげて泣く腕の中の存在がどうしようもなく愛しい。
自分に似た彼女が自分のいる所まで堕ちるのを止めなくては。
本当は素直で純粋で淋しがりな女の子。
あの男の真意は解らないが、渡せない。
キミが傷付かない様に、もし傷付いてもこうして泣く場所になれるようにキミの心はボクが守る。


「あかんな。」

再度一人呟いて市丸は右手で口を覆う。
柄にもなく本気になりかけている。
自分にはこんな風に誰かを想う事などしている場合ではないのに。
つい、守りたいと想う以上の欲が出そうになる。

「もう、手遅れやろうね。」

右手で隠した口許に諦めたような自嘲の笑みがこぼれた。
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