第3章 覚醒
淡い翠の光の中に飛び込んだ藍染はゆっくりと周りを見回しながらその能力を観察する。
治癒能力の塊のような霊力か……
少し温かく心地好い光の中にゆるゆると漂っている。
水の中にいるような感覚に陥る。
光の中を進むと先程斬魄刀を始解させた少女が佇んでいる。
その前に数名の生徒が横たわっている。
先程まで聞こえていた呻き声は聞こえない。
皆穏やかな顔をして眠っている。
「これは君の斬魄刀の能力かい?」
近づき声をかける藍染に少女がゆっくりと閉じていた目を開けた。
「っ!……」
一瞬息を詰める。
全てを見透かされるような感覚。
その瞳は聖母のような慈愛に満ちている。
穏やかな瞳のはずなのに、何故か阿修羅に睨まれているような戦慄が身体に走る。
(何だ。この感覚は何だ。彼女は何者だ?この霊力は?)
少女を見る藍染の瞳に警戒の色が浮かんだ。
「三人の治癒はすぐに終わります。眠っているので連れ出して下さい。もう一人は怪我が酷いので、まだしばらくはこのままでお願いします。」
思ったよりも幼い印象の声だった。
人形の様な感情のこもらない表情と話し方だ。
一瞬感じた戦慄は今は無い。
だが、何かが引っ掛かる。
「わかった。彼らを運び出したあとまた戻ってくる。彼が回復するまでは僕も残るよ。」
彼女を観察しなければ。
先程感じた戦慄と引っ掛かりの原因が解るまでは。
今後の自分にとって邪魔な障害とならないとも限らない。