第3章 覚醒
『優姫、大丈夫かい?またお前を守れなかった。お父さんを、許してくれ……』
『お父さん、お父さん……一人にしないで……』
『優姫、お前と暮らせて幸せだった。お前は母さんに似て、優しい子だ。こんな力を受け継がせてしまって……すまない。』
だんだん父の声が弱くなる。
『強くなりなさい。この手で幸せを掴みなさい。この手で……大切なものを……大切な人を守れるように……』
父の目から一筋の涙が零れた。
記憶を蘇らせた優姫の瞳からも涙が溢れた。
あぁ、優しいのはお父さん、貴方です。
沢山愛してくれました。
ずっとこの力の事を負い目に思っていたでしょう。
そんな貴方の心がわかったから、この力に封印をしたのです。
記憶ごと閉じ込めた私の力。
あの日感じたどす黒い殺意。
貴方が私に望んだのはこんな力じゃない。
「……き……ゆ……ゆう……」
「誰?……お父さん?私を呼んでいる?」
「優姫、目覚めの刻だ。」
はっきりと声が響いた。
凛とした涼やかな声。
父の声とは違う。
いつの間にか耳鳴りはなくなっていた。
ぐらりと目の前の景色が歪み、眩しい光に思わず目を閉じた。
ハッとして目を開けると、そこは静かな浜辺だった。
月が出ている。
打ち寄せる波に足が濡れる。
穏やかで、懐かしいような、寂しいような……
ぎゅっと胸を掴まれたような感覚に、思わず涙が出そうになる。