第3章 覚醒
『ぎゃぁぁぁぁー!! 』
『いやぁぁぁぁーーー!!』
父親と自分の絶叫が重なった瞬間だった。
パンっ!! と何かが弾け飛ぶような音を聞いた気がした。
『ははは!凄い霊力だ!いいぞ、喰らってやるぞ!』
父親を投げ捨てた虚が優姫に迫る。
その時霊力が爆発するように膨れ上がる。
『殺す、殺してやる!! 許さない!死ねっ!』
『っ!何だ。この霊力は?』
優姫に迫っていた虚が驚愕に足を止めた。
怪我をして動けなかった優姫がゆらりと立ち上がる。
優姫の霊力が光を帯びる。
その光はどんどん強くなり、中心にいる優姫の姿が見えなくなる。
そこへ駆けつけた死神達が何か叫んでいるが優姫の耳には入らない。
『許さない。消えろ。消えろぉぉぉーー!』
優姫の絶叫と共に光の爆発が起き、光に包まれた虚は塵と化し消し飛んだ。
優姫はあの時に芽生えた自分の中に渦巻いたどす黒い感情を思い出した。
理不尽に奪われた幸せ。
傷ついた身体の痛みと、父親を失った心の痛みと、悲しみ、憎しみ、怒り。
相変わらず耳鳴りがする。
頭はさらに割れるように痛くなっている。
『ゆ、優姫……』
倒れた父親が微かな声で呼んだ。
その瞬間膨れ上がった霊力は力尽きたようにプツリと消えた。