第8章 特別指南 2
「ダメだ。今夜は帰さないよ。」
強く腕を引かれ胸の中に閉じ込められる。
「藍染隊長?」
「仕事も終わったし、返すのが当たり前なんだろうが、ダメだ。明日の朝、帰ればいい。今夜はまだ、側に居てくれ。」
胸に顔を押さえつけられて顔は見えない。
懇願するように言い募る声は少し震えていた。
「離れ難いと、思ってしまうから……この腕の中は居心地が良すぎて苦しいです。」
「ふふっ、そうだね。僕もこうして抱き締めると君が愛しくて、離せないよ。戻ればお互い暫くは会えない。だから、今夜はまだこうしていたいんだ。」
零れた涙を見られないように俯いて小さな声で、はいと答えた。
あの後は乱れた気持ちをどうにか沈めて書庫の仕事を終わらせた。
藍染隊長は隊士に剣術稽古をしたり、いつもの仕事をこなしていた。
私もしっかり気持ちの切り替えしないと。
明日から通常の仕事できるのかな……
ゆったりと夕食を食べた。
藍染隊長から色々な書物の話を聞いて、いくつか貸してもらうことになった。
「返して貰うときに会えるからね。こうして、少しでも優姫と繋がりを持っていたいんだ。我ながら女々しいな。」
自嘲するように笑う。
「ちゃんと直接藍染隊長にお返しします。私も、会いたいです。小さな事でも理由をつけてでも……」
会いたいと思う。
離れ難いと思う。
恋、なのかな?
まだよくわからない……
「一緒にお風呂にはいろうか?」
とびきり甘い声で囁かれた。