第8章 特別指南 2
「体調が悪いんですか……」
僅に目を吊り上げた雛森君。
早朝優姫と浴室に入るところを覗き見ていたから何があったかは察しているだろう。
優姫を見る瞳にほの暗い感情が浮かぶ。
煩わしいな……
僕に上司以上の気持ちを持ち、扱いやすい手駒になると、それだけで側に置いているが、今は優姫の気持ちを害する只の邪魔者だ。
さっさと引き取らせよう。
「それで、何か用があったのでは?」
「あの、本日の講義をお休みすると伺ったので、どうしたのかと……」
「こんな状態の彼女を放っておけないので今日は書類の処理に専念します。なので講義はまた後日にしたんですよ。君も通常の仕事に戻ってください。」
にっこりと笑いながらも有無を言わせない。
悔しそうな目で優姫を一瞥すると雛森君は退室した。
そんな目で見ることすら許さないのに。
優姫に目をやるとやはり青い顔をして自分を責めている表情だ。
こんな表情をさせるとは……
いつか彼女には計画を実行する時に残酷な復讐で報いてやろう。
「雛森君の事は気にしないように。僕が君を何より大切にしたいだけですから。」
だからそんな顔をしないで、笑っていて欲しい。
泣き笑いを浮かべた優姫はまた布団に顔を隠してしまった。