第8章 特別指南 2
私は?
どうして藍染隊長の顔を上手く見れないの?
ゾワゾワと胸がざわめく……
危険信号の様に。
考えるなとどこかで忠告する自分がいる。
今までもそうやって上手く生きてきた。
高望みはするな。
苦しくなるのは自分だ……
雛森副隊長と並んだ藍染隊長……
誰にでも同じように朗かな笑顔で……
ズキン、ズキン……胸が痛み始める。
寂しかった……
父のようだと思った人が、こんな私の事を好きだと言ってくれた人が、やっぱり遠い人だから。
自分の気持ちがはっきりしないのに、触れられ、求められる事に流される事は良くないと思ったばかりなのに。
誰かのものになってしまうのが寂しい……
汚い独占欲……
私は身勝手で汚い……
寂しさからすがり付くような卑怯な女。
大嫌いだ……
後ろからふわりと抱き締められるような感覚。
『やぁ、久しぶりだね、優姫。君はまず一つ君を見つけた。』
「影柘榴……」
『寂しがりで、弱い君。大好きだよ。』
「嘘、こんな私を好きなんて……」
『大好きだよ。可愛い女の子。君は君を知り、弱さを見つけ、受け入れて強くなるんだ。弱さを知らない者は何が強さかも解らない。』
「私の心の弱さ……」
『誰でもそうだよ。強いばかりじゃない。必ず弱さも持っている。その弱さゆえに苦しんでる。』
「誰でも?」
『誰でも。君は君を知り、同時に他人も知る。強く見えても苦しんでいる者もいる。そんな彼らも救える様に。そうなった時、君は強くなる。戦う力を手に入れる。』
それだけ言い残して影柘榴は消えた。