第8章 特別指南 2
四日目
今日も書庫の整理は順調に進んでいる。
朝の大失態がまだ尾を引いているけど、無心に手を動かす。
「藍染隊長。」
外からよく通る声がする。
窓から見ると藍染隊長と、雛森副隊長が歩いている。
仕事の話をしているみたい。
雛森副隊長の頬は淡い桃色に染まって、藍染隊長を見る瞳は潤んで輝いている。
そうか、雛森副隊長は藍染隊長の事を……
部下以上の感情を滲ませて藍染隊長を見上げる雛森副隊長は、こんなこと思うのは失礼かもしれないけど可愛い。
あんな顔を見せられたら藍染隊長だって男としてほおっておけないのではないだろうか?
お似合い、だと思う。
雛森副隊長は副隊長にまでなるほどの実力もある。
ああして藍染隊長の一番側にこれからも雛森副隊長はいる。
私はあと四日で元の生活に戻るのだから……
不意に今朝目覚めた時に藍染隊長の腕の中に包まれていた事を思い出す。
護られるように抱き締められて、暖かくて、安心する白檀の香り。
幸福感に包まれていた事は否定出来ない。
自分の気持ちもよくわからないのに、確かに幸せだった。
ても、ああして藍染隊長に想いを寄せる雛森副隊長の様な方に申し訳ない。
考えながらぼんやりと二人の様子を眺めていた。
雛森副隊長がこちらに気づいて目が合った。
ドキリとした。
冷たい目……
あの目には慣れている。
いつも小さな頃から見られていた。
嫉妬、見下し、嫌悪……
慌てて二人から目を背けた。
雛森副隊長は短い間でも藍染隊長の側に自分のような者がいるのは嫌だろう。
あと四日……
そうすれば藍染隊長もいつも通りの毎日に……
私がいない毎日に戻るのだ……
ズキリと胸が痛んだ。