第7章 特別指南 1
「はぁ……」
もう一度ため息をつき、優姫のおでこに口づけた。
こんなにあどけない顔で身を委ねられたら何かしようという気も失せてしまった。
無邪気な顔が恨めしくも愛おしい。
優姫を自分の布団に横たわらせる。
人を呼んで膳を片付けさせると優姫の寝息を聞きながら文机に向かった。
一時間ほどたった頃、後の布団の中で身動ぎする気配があった。
起きたか?
振り返ると優姫がぼんやりとこっちを見ている。
寝惚けているのか素のままのあどけない表情をしている。
近づいて頭を撫でてやる。
「たいちょう?……」
幼い仕草で首を傾げる。
まるで子供に戻ったようだ。
そう言えば、調査した優姫の子供時代は大分苦労していた。
父親が亡くなった後は流魂街で一人で生きていた。
五、六歳ほどの身体まで育っていた彼女は貴族の家などの下働きをしながら勉強していたらしい。
子供らしい過ごし方をしなかったことも彼女から感情を奪った原因の一つだろう。
甘えたい時期に甘える相手がいなかったのだろう。
ギュッと心臓を掴まれるような感覚と、彼女を無性に甘やかしてやりたい気持ちが込み上げる。
優姫を優しく抱き締める。
本当に抱き締めてやりたいのは子供の頃の優姫なのだが、それは叶わない。
「藍染隊長……」
不思議そうに見つめる瞳に優しく笑いかける。
「いい子だから、もう少し寝なさい。」
幼子を諭すように言うとそっと布団に横にさせ、掛け布団をかけ直してやる。