第7章 特別指南 1
ちゃんとしなくちゃ……
自分は色々と欠落している。
怒りや憎しみといった感情もだけど、好きとか、愛しいとか……
大切なものがすっぽり抜け落ちている。
ちゃんと自分と向き合えるようになって、誰かを好きだと思えるようになるだろうか?
ぼんやりと考えていたらだいぶ時間が経ってしまった。
積み上げた書物に向き直る。
さぁ今日の仕事を終わらせなくちゃ。
結局この日は藍染隊長のお時間が取れなかったので一日書庫の整理を進めた。
夕食を藍染隊長の部屋へ運ぶ。
「藍染隊長、夕食をお持ちしました。」
声をかけて扉を開ける。
文机に向かっていた藍染隊長が立ち上がる。
「ありがとう。君の膳も持っておいで。」
私から膳を受けとると、優しく微笑む。
「はい。直ぐに。」
自分の膳を持って戻ると藍染隊長が綺麗な瓶を持っていた。
「京楽隊長から頂いたんだけど、君も付き合ってくれるかい?」
京楽隊長……ということは、あの瓶の中はお酒?
「えと、すみません、私お酒は飲んだことがなくて……」
断ったほうが賢明だ。
どんな粗相をしでかすかわかったものではない。
「じゃあ酔わない程度に少しだけ。飲んだことがないなら今のうちに嗜んでご覧。そういう席で困らないように。今日は僕が様子をみててあげるから。」
お酒を飲まなきゃいけないこともあるのかな?
四番隊の先輩たちは無理に飲みに誘う方はいないけど、いつか他の隊に異動になることもあるかもしれない。
たしかに、飲んだことがないというのはいつか困るのかも……
「では、少し頂いてみます。」