第32章 ピタゴラTrip!
「花くん!やあ!」
思いっきり親しげに声をかけてみる。
呼ばれた花巻くんが読んでいた教科書から顔を上げた。
机の大半はやはり教科書を読んでいる松川くんに占領されている。
男の子ってパーソナルスペースが狭いっていうかよく分からない。
少女マンガにありがちなアクシデントがあったらキスしちゃいそうな距離だな。
「松くんも、やっ!」
手を上げると松川くんは案外ノリ良く手を上げてくれたのでハイタッチする。
「何やってんの?石和さん勉強しなくて大丈夫?」
花巻くんがげっそりした顔で云う。
「ん?」
小首をかしげて問い返すと、
「次の英語、小テスト聞いてない?そっちのクラスだってやるぜ」
で、今二人で必死に詰め込んでるんだ。