第32章 ピタゴラTrip!
「あ、石和さん?だっけ?どうしたの?」
主将一一及川くんが目ざとく私を見つけてくれた。
「初音で良いよ、及川くん。ね、木原さんを見なかった?」
笑って聞いてみる。
及川くんが顔を曇らせた。
あ、知らないな。
岩泉くんはゆらゆら白波夜船だ。
「むぎちゃん?今日は朝以来見てないかな〜」
案の定の返事だ。
ていうか本人の前では名前で呼んでるのにいないとあだ名呼びなんだ。
男心って複雑。かわゆいよねぇ。
思わず笑ってしまった私に及川くんが眉をひそめた。
「何〜その顔〜」
指先でえくぼをつつかれる。
「いや、ん〜、病気って大変だよねぇ。お大事に〜」
ぺっと鬱陶しい指を振り払い私。
「お前具合悪いんか?」
岩泉くんが真面目に取り合っていてヤバイ。
「違うから岩ちゃんちょっと黙ってて!」
「カリカリしなさんな〜」
「カルシウム不足か?」
「二人共いい加減にして!初音は別の教室でしょ?授業始まるよ!」
及川くんに追い払われてブーブー鳴きながら教室から出る。
次は…………、