第14章 家族
家に帰り自室に入ろうとドアに手をかける。
「おかえり、梓。」
後ろから兄に声をかけられた。
『…ただいま。』
何故か重い空気がそこに流れる。
「……祥吾くんとより戻したの?」
兄に少し不機嫌そうにそう聞かれなんと返せばいいのかわからなかった。祥吾とはそういった関係に戻ったものの付き合っているというわけではない。大輝とも同じような関係である。
『ううん!違うよ!…一人で泊まったわけじゃないよ!…桃井さんとかバスケ部の子たちもいたし…』
咄嗟に嘘をつく。祥吾の家に一人で泊まったとなると今まで関係のあった二人がそこで何もなかったというのはあまりにも不自然すぎると思ったため、同性の桃井の名を出した。
「そっか!もうお昼食べた?まだなら一緒に食べよう。」
兄の表情が微笑みに変わる。
『まだ食べてない。着替えたらリビング行く。』
そう言って自室に入った。
着替えをすませリビングに向かうとすでにダイニングテーブルの上に料理が並んでいた。お昼にしては少し豪華すぎるメニューだった。
「昨日の夕飯だよ。いきなり泊まるっていうから…もうごはん作っちゃってたのに。」
椅子に座りながらごめんねと謝る。兄の作った料理を口に運ぶとどれも美味しく自然と笑顔になる。
「そんな嬉しそうに食べられると怒るとこも怒れなくなるじゃないか。…でもこれからはもう少し早く言うように。」
『はぁい。』
兄の料理は今までに何回も食べてきたが少しの失敗はあるものの自分が作るもの以上に美味しくいつも凄いなと感心していた。
『お兄ちゃんって前に私のために料理勉強したって言ってたけど…お母さんに教わったの?』
私がその質問をすると兄の顔が曇った。
(あれ?なんか聞いちゃいけなかった…?)
「そっか…それも忘れてるのか…伝えておかないといけないよな…。」
以前何故他の家族と一緒に住まないのか?ということを考えたが何かそれと関係しているのか、と私は思った。
「少し長くなるんだけど…まぁ知っておかないといけないことだからね。」
と兄が語りはじめた。
「まず、もう最初に言うけど…俺らの母さんはもう亡くなってるんだ。」
兄の口からいきなり衝撃的な事実を知らされる。やはり少し他人事のように感じてしまう。だが心のどこかで悲しいという感情もあった。